門出、新しい研究生活――その2: 経済学史研究会第273回例会
もう3か月あまり前のことで恥ずかしいが、ぼくの定年退職にちなんで経済学史研究会の第273回例会が2月28日(土)に催された。3月までぼくが世話人だった研究会の例会を自分自身の記念に(?)というのは変なことだ、と思われるだろう。じつは、この例会のみ、同僚の久保真さんが特別に発起・オーガナイズしてくださった。ありがたいことである。
通常 定年退職に際して学部主催の最終講義が内外に公開されて催されるのだが…、他大学の親しい研究仲間の方々に二度手間をとらせないように、学部長や職員の方々に最終講義開催のお手数をかけないように、そしてこの例会を成功させて久保さんの顔を立てるためにも、例会を優先することにして、最終講義は辞退させていただいた。
例会はいつもどおり、2つのラウンドからなっている。
第1報告は、昨年出たぼくが編者の経済思想の通史『経済思想史』(法律文化社)についての、関学経済名誉教授の篠原久さんによる書評である。ぼくの前に30年間も研究会の世話人であられた尊敬する大先輩のこの方から、部分的には不充分な点があるとはいえ思想史的な経済学史を叙述し・その意義を説くというこの本に賛意が表されて、とても嬉しかった。
原田による第2報告のタイトル「来し方行く末」は、流行りの中国映画のタイトルと同じであるが、後者は死者について言っているのだが、ぼくはまだ死んでいない^^;;
高校生の頃から社会科学に憧れ、福島大学で4年間過ごしたのち、名古屋大学大学院に進学して水田洋先生の院生となり、博士後期でドイツ・フライブルク大学に留学しカール・ブラント教授のもとで博士学位を取得した、という修業時代について、まず語った。
帰国後1988年から22年間を四日市大学で過ごし、学位論文『観念論とロマン主義の政治経済学――フィヒテ、ミュラー、ヘーゲルの職業団体論』(ドイツ語、1989年)や『アダム・ミュラー研究』(2002年)を出版した。
2010年に関西学院大学に転じて今年の退職までの間に『19世紀前半のドイツ社会経済思想――ドイツ古典派、ロマン主義、フリードリヒ・リスト』(2020年)を出したこと、またこの研究会の例会を年4回(最初は5回)13年にわたってオーガナイズしたこと。
以上のような流れを語った。そして、同じくドイツで博士学位を取得した同世代の慶応義塾大学名誉教授 池田幸弘さんが――コメンテイターとして――「いまでもドイツ語で研究を発表できていて、ドイツ社会政策学会経済学史委員会の正委員でもあるのは原田さんだけではないか」と、ぼくの希少価値について語ってくださり、とてもありがたかった。
この報告「来し方行く末」では、沢山の裏話を交えて、かつて自分が思い悩んだことや人との出会いでお世話になったことなどを率直に語っていった。それが皆さん、とても面白かったようである。後日いくつもの感想メールをいただいたが、「原田先生の純情に感動しました」といった内容のものが複数あった。
懇親会では多くの方々から祝辞をいただいた。印象的だったのは、ヨーロッパの経済学史研究の重鎮でフランクフルト大学名誉教授のベルトラム・シェフォールトさんの「テツシが現役でのストレスから解放された名誉教授として さらに研究を深化させていくことを、楽しみにしている」とのビデオメッセージ。久保さんが先方に頼んで準備されたサプライズである。
ビデオメッセージに呼応して、わが国の重鎮 京都大学名誉教授の八木紀一郎さんから、「名誉教授としてのこれからの活躍に期待する」といったお言葉をいただいた。八木さんにはシェフォールトさんらドイツの研究者を紹介していただくなどお世話になりっぱなしだと思っていたが、「紹介した方々とちゃんと交流していただいて ありがとう」とのことで――これもぼくにとってはサプライズ!――とても嬉しかった。
また、現在の経済学史学会代表幹事(会長)である名古屋市立大学の藤田菜々子さんも出席されていて、それらに呼応して「「名誉」の世界への新規のご参入、おめでとうございます」というメッセージをいただいている。また進化経済学会の現 代表幹事でいらっしゃる専修大の吉田雅明さんからもメッセージをいただいた。
その他、比較的ご年配の方々としては関西学院大学元学長の井上琢智さん、兵庫県立大学名誉教授の生越利昭さん、独立研究者の塘茂樹さんや福永英雄さん、明治大学の八木尚志さん、関西大学の中澤信彦さんが、またミネルヴァ書房の堀川健太郎さんや法律文化社の梶谷修さんも出席されていた。
若手・中堅の方々からは、ちなみに長崎大の南森茂太さんが「私は著書でもって水田洋賞を受賞したけれど、原田先生には大学院生時代のみならず、その著書の制作にあたっても大変お世話になり、それなくしてはそのような著書は出せてなかっただろう」とのお言葉をくださった。

たしかに関学出身の南森さんには、学位論文執筆時もさることながら、後年それを出版する際にも改訂稿をぼくに送ってこられて、見てほしいとのことで、見てみたら難解な文章が多かったので「分かりやすい文章に!」というアドヴァイスをした。それが少しは功を奏して受賞へとつながったのなら、とても嬉しい。
その他、中堅では、京都大の竹澤祐丈さん、日本大の石田教子さん、大阪経済大の上宮智之さん、富山県立大の平野嘉孝さん、金沢星稜大の山本英司さん、若手では、愛知学院大の大塚雄太さん、中央大の若松直幸さん、鹿児島大の渡邊碩さんも出席されていた。



この記事を閉じるにあたって、ご出席くださったすべての方々に あらためて厚くお礼申し上げたい。定年退職してからも――いや逆にそうだから!――現役時の義務から解放されて研究ができるものだということや、在職中に皆さんにさせていただいたことがそれなりにお役に立てていたということなど、確認できたことは大きな喜びであった。今後も、このご交誼を大切にして、新たな研究生活をおくっていきたい。
またご出席の方々のみならず、およそ13年間にわたって経済学史研究会の世話人を務めていたなかで、例会に報告者・討論者としてご協力くださった数多くの方々に、また聴講者としてフロワーで・オンラインでご出席くださった方々に、心から厚くお礼申し上げたい。
なお、この記事で使用した写真はすべて上宮智之さん(大阪経済大)の撮影によるもの。末筆ながら、優れた撮影技能で貢献してくださった上宮さんに謝意を表したい。










