研究室の引越し

 2月末に経済学部教員の研究室の、キャンパス内での引越しがあった。というか、そのときは 業者による梱包・搬出・搬入・開梱・設置というフルコースを大学が用意して、やっていただいたのだけれど、いかんせん研究室というものは おびただしい本で複雑怪奇なので、業者はお決まりの仕方でよく頑張ってくださったのだが、そう やすやすと片付くものではない^^;;

 ぼくは、膨大な本はその分類を変えずに新らしい研究室の本棚にも並べれたらいい と思って、まずは引越し前の本棚にラベルを張り写真にも撮って、そのまま平行移動、と思いきや…。

これまでの本棚でラベル貼り

 新研究室では本棚の形状は違うし 本があまり入らなくて、 開梱・設置 の段階でギブアップだった。業者の方々と一緒にあれこれやったが、ダメだった。他の研究室などでは本の後ろにも本を入れることで しのいだようだけど、奥の本は見れなくなるのでやめた。すると、段ボール箱9つほど入りきらないままで時間切れとなった。

 もうあと4年で定年だし、最終片付けの前哨戦と思って できるだけスリム化しておこう!そうだ 断捨離の精神で!ということで、人に差し上げる・古本屋に売る・単に捨てる・公費購入本を除籍する という作業をくり返した。

 最後に差し上げたのがグリム兄弟の『ドイツ語辞典』(リプリント)全33巻で、引き取り手は大塚雄太さん(愛知学院大学)である。結果的に、全体として本の量は元の半分を切るぐらいになった。ようやく片付いたのは4月10日頃つまり最初の授業が始まる直前。

新しい研究室の本棚

 そんなに長くかかったのは、ぼくの場合とくに、業者の作業の次の日に母が他界し(享年94歳)葬儀をはじめ様々な手続をしないといけない という極めつけの事情があったことによるのだけれど、他の先生方も「あまりにも終わらないので、できるだけ段ボール箱を開けないようにしている」(!?)などなど言われたりで、やはり皆さんハードな闘いだったようだ。

新研究室の作業スペース

  これが新研究室のデスク・コーナーである。少し上の方まで撮影したのは、壁に掛けた額縁を見てほしかったからで、なんと小林昇先生が生前に自宅に掛けて嬉々として眺めておられたエッチング版画なのである。

 神聖ローマ帝国直属の自由都市ロイトリンゲンの1620年の全景。フリードリヒ・リストの生まれ育ったあの町の かつての雄姿だ。生前の小林先生をご自宅に伺った方々なら 見覚えがあるはずである。

1620年のロイトリンゲン

  昨年 小林先生のご長女 松本旬子さんのご依頼で、お手持ちの小林昇青少年期・福島期文書を福島大学に寄贈するのをお手伝いしたが、そのプロセスがひとしきりついて、旬子さんがこの版画をぼくにくださり、ぼくが父の油絵を差し上げた。旬子さんには「新しい研究室に移ったら飾らせていただきます」と約束していた。研究室が片付き、約束を果たすことができて嬉しい^^。