マームズベリから
イギリスの「マームズベリ」はトマス・ホッブズ(1588~1679年)生誕の地であるけれど、ここでは思想史の議論ではなく、ぼくの姉 純子がそこに住んでいるという話である。
研究者ではない姉が25年ほど前にイギリス人の夫スティーヴ・娘ハンナとともに都会のブリストルからそこに引っ越したのは、単に郊外の家を購入したからであった。その姉からメールが来た。父の俳画の個展を友人の生け花の展示と合わせて5月~6月にマームズベリで開催する、という知らせだった。
それにしても英語ベースのフライヤーに日本のオジサンと俳画そして「お花」が出てくると、なんとエキゾチックなのだろう。自分たちがアジア文化圏の人間だということに、あらためて気付かされる。日本にいるぼくたちは、普段あまりそれを意識していない。島国の日本人にはなぜか「自分たち日本人は、旅行でアジアに行く」といった、「日本人は日本人」的な感覚がある。
じつは島国のイギリス人にも「自分たちイギリス人は、旅行でヨーロッパ(大陸)に行く」という意識がある、と姉から聞いたことがある。しかし、イギリスでもドイツでも いやフランスでも、そこに日本のものが出てくると本当に東洋的な雰囲気になるのが不思議である。そうした絵の周りにアルファベットしかないことが、わたしたちにはそう感じさせるのかもしれない。
もちろん会場の「ジョン・ボウェン・ギャラリー」のあるマームズベリ市庁舎は、イギリス・ヨーロッパに典型的な石造りの建物だから、それと対照的な東洋の美がそのなかでひっそり花咲く といった個展になるのか。いや、東アジア文化圏のなかでも「静」(ワビ・サビ)を尊ぶ日本の俳画・生け花は、何百年も前の石造りの建物のしっとり感と、けっこう調和するかもしれない。このギャラリーでの展覧会は、コロナのロックダウンが何ヶ月かぶりに緩和されてから最初のものだ、と姉から聞いている。
少し父 原田克己(2017年に94歳で他界)のことを言っておこう。
長い間サラリーマンをしながらの作品の制作という、二足のワラジをはき続けたのち、「パリのルサロン Le Salon de Paris」で入選し、定年退職を機に画家として完全に独立した。そしてある会派の理事にまでなった父は、晩年幸せだったと思う。ジャンルは油絵と俳画で、油絵は関学にも数枚寄贈した。
油絵では花とくにカトレヤが得意で、俳画では植物や小動物を好んで描いた。残念ながら犬はないけれども(母が犬嫌いだったので)、小鳥などをカワイク描いたのがけっこういい。ちなみに、ぼくがもっている父の画帳にはこんな作品がある。
これらを眺めつつ、かの地での個展の盛会を祈る!
エキゾチックな面白さが、向こうの人たちをニコッとさせるかな^^!